2009-04-13

再会

漸く広い処に出た 果ての峰にはまだ冠雪が残り 瀬は雲を映しながら淡々と流れている 風もなく音もなく 空に在った筈の鳥たちの影の跡を追うようにして迷い込んで来た人 あれは娘たちと丁度同じ顔をした私の妻だ つまり私は既に夫という父 父である夫であり あの頃の裾野に向かってよく風が叢を薙ぎ 燃えるような落陽が忽ち野を枯らし 季節は色彩と虚空を巡りながら熾烈を極めていたはずだネエ オン トオ トン トン カタリ 運命も命運も行違ったまま経巡るものだよ 私も追っているうちに迷い込んでしまった者の一人 そうして熱い息を交わした後は 小水すれば決まって身震いし 雪解けの事などを思っては荘厳な気持ちになるんだ