2008-11-29

繰上師走

ほんの薄皮一枚の濡れ衣をお前はいったいいつまで着せられているつもりなんだと、間歇的に溢れ出る水の盛り上がりを注視しながらも流れに乗るタイミング計りきれない無言の少年そのか細い首すじの表情が語りかけて来る、昨日今日または未来から、そこらじゅうの私の仕業に向けられるそれは明らかに少年の姿勢から某かの事後であることが知覚され、大写しにする、首の付根、ちょうど耳の根元の発達はまだ扁桃と胡麻の香ばしさの違いを自由には分別しない願わくば無垢なまま、珈琲や橄欖なら尚の事、水とは決して混じる事のない油の粒をうっすらと浮かべ、内面に張りついた季節、赤、黄、緑にすっかり色づいた葉の散りゆく外の世界、時間は流れるようにしていてその実、ぺらりとした空に張りついている。ベランダの濡れた衣はいまだ渇かず。

2008-11-05

発端

太宰かと思ったら山頭火だった朝、改めて見くらべてみる熟した柿の実の丸みと越南の少女の青い臀部とを。両者ともフォルムにおいては独断と偏見による選り好みをのみ許容し得る点で確かに共通する。しかし既に周知のことなので多少のばつの悪さに伴われ窓際に沿い立ち、罅ひとつない硝子窓の立ち並ぶ視界に連なる列車の在また不在、東雲の散去ったあとのしずかに波打つ平凡な朝のはじまり。代わりに一匹の母(猫)が驚く。次の瞬間、周りを取り囲むようにして人界の街、地図は構成される。年老いた息子達はまた帰途のない出発へと招聘される。