2008-12-21
2008-12-06
2008-11-29
繰上師走
ほんの薄皮一枚の濡れ衣をお前はいったいいつまで着せられているつもりなんだと、間歇的に溢れ出る水の盛り上がりを注視しながらも流れに乗るタイミング計りきれない無言の少年そのか細い首すじの表情が語りかけて来る、昨日今日または未来から、そこらじゅうの私の仕業に向けられるそれは明らかに少年の姿勢から某かの事後であることが知覚され、大写しにする、首の付根、ちょうど耳の根元の発達はまだ扁桃と胡麻の香ばしさの違いを自由には分別しない願わくば無垢なまま、珈琲や橄欖なら尚の事、水とは決して混じる事のない油の粒をうっすらと浮かべ、内面に張りついた季節、赤、黄、緑にすっかり色づいた葉の散りゆく外の世界、時間は流れるようにしていてその実、ぺらりとした空に張りついている。ベランダの濡れた衣はいまだ渇かず。
2008-11-05
2008-10-28
2008-10-17
2008-10-13
朝のスケッチ
もう何時間も同じ場所でじぃっとして、木々の向こう、山の向こう、雲の流れるに任せた空の果てを思いやっているところに、えやっと舌を引き抜かれたような衝撃に思わず身震いする瞬間ががくんがくんと訪れたものだった。ほんのまぼろしか、それとも千切れちぎれの記憶を寄せ集めただけだったのか、そもそも山は角々しく姿を変えながら荒ぶる血を湛えながら昂るものだし、木々の根先の繊毛は風の音川の音に慰撫されて、草花は朝と夕にその身を濡らす。おれは何にも知らずにただそこに居て、ただただ流れてゆく雲と水の間にのぼせた頭と臍の辺りをひたしていただけだ。
不規則なそれら混然とした世界の息吹といえども、一つひとつ目に映る動態、一つひとつ聴こえる声部へと切り出してゆく。それらは、あるひとつの階調に沿って進み、次第に重なり、やがて大きなうねりとなる。そして頂点を超えたとき、おれの内蔵は舌とともに引き抜かれ、代わりに空っぽの風景がばしゃっと転がった。
2008-10-09
宿題(夜)
虫歯ひとつなく皺くしゃの表情をするような教師がひとりも居ない教室では、午後になると決まって塩を吹きはじめる海綿たちの様子が気になって仕方ないといった出で立ちの、ろくに英語の5、6カ国語も覚えもしないで、やれビールを出せ、株じゃなくて保険金で映画を作れと、それこそまさしく夏恒例だと言わんばかりに2、3人で平気で怒鳴り込んで来る女学生もこの頃ばかりはまばらに目につきはじめる。街は冬支度を始めたのだ。
恐らくここ数年食べつづけてきたたべ物のせいのこともあるので、私が肌着のギャザーの痒みにさえも目もくれずに手塩にかけて育てた娘たちだけには、窓口で一万円札や五千円札をぴしゃり、びしゃりと平気でやるような真似だけはさせる訳にいかず、池と砂場のある公園までの歩数を確かめるだけの間に、つまりこのぴしゃりが本当にあの重く軋んでいたはずの襖戸や障子戸がすぅっと横滑りしていく瞬間と等しい時間を持ち得た挙げ句のぴしゃりと同じかどうか訊かれてすぐに答えてやることができない。
叢に墜ちた硝子片に面映る空を見下ろし、覗き込もうとするときの、四季に向かってゆくわたしたち、人やけものや草木たち皆の心の持ちようの問題でもある。
表ではまだ微かに地虫の声が響いている。
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