2008-10-13

朝のスケッチ

もう何時間も同じ場所でじぃっとして、木々の向こう、山の向こう、雲の流れるに任せた空の果てを思いやっているところに、えやっと舌を引き抜かれたような衝撃に思わず身震いする瞬間ががくんがくんと訪れたものだった。ほんのまぼろしか、それとも千切れちぎれの記憶を寄せ集めただけだったのか、そもそも山は角々しく姿を変えながら荒ぶる血を湛えながら昂るものだし、木々の根先の繊毛は風の音川の音に慰撫されて、草花は朝と夕にその身を濡らす。おれは何にも知らずにただそこに居て、ただただ流れてゆく雲と水の間にのぼせた頭と臍の辺りをひたしていただけだ。
不規則なそれら混然とした世界の息吹といえども、一つひとつ目に映る動態、一つひとつ聴こえる声部へと切り出してゆく。それらは、あるひとつの階調に沿って進み、次第に重なり、やがて大きなうねりとなる。そして頂点を超えたとき、おれの内蔵は舌とともに引き抜かれ、代わりに空っぽの風景がばしゃっと転がった。