2008-10-09

宿題(夜)

虫歯ひとつなく皺くしゃの表情をするような教師がひとりも居ない教室では、午後になると決まって塩を吹きはじめる海綿たちの様子が気になって仕方ないといった出で立ちの、ろくに英語の5、6カ国語も覚えもしないで、やれビールを出せ、株じゃなくて保険金で映画を作れと、それこそまさしく夏恒例だと言わんばかりに2、3人で平気で怒鳴り込んで来る女学生もこの頃ばかりはまばらに目につきはじめる。街は冬支度を始めたのだ。
恐らくここ数年食べつづけてきたたべ物のせいのこともあるので、私が肌着のギャザーの痒みにさえも目もくれずに手塩にかけて育てた娘たちだけには、窓口で一万円札や五千円札をぴしゃり、びしゃりと平気でやるような真似だけはさせる訳にいかず、池と砂場のある公園までの歩数を確かめるだけの間に、つまりこのぴしゃりが本当にあの重く軋んでいたはずの襖戸や障子戸がすぅっと横滑りしていく瞬間と等しい時間を持ち得た挙げ句のぴしゃりと同じかどうか訊かれてすぐに答えてやることができない。
叢に墜ちた硝子片に面映る空を見下ろし、覗き込もうとするときの、四季に向かってゆくわたしたち、人やけものや草木たち皆の心の持ちようの問題でもある。

表ではまだ微かに地虫の声が響いている。