2010-05-24

朧涼

眠りと情愛の立ち替わりに遠く谺を聞く
木々間から
宵の闇の向こうから
滲み出てくる液体のような音を受肉する
例えるならば
稚児が産婆を伴って歩きまわる午後
それは多分ある種の平衡状態と言える
また吹きすさぶ黄砂とともに
猛禽の曲がった嘴が目掛ける鉛の振り子の像
その振り幅と雲の動きに関心が移る
しかし一方開いた半身は貝紐に強く巻きしだかれながら
磯に差す曙光によって攪乱された
ストップモーション
槽は沖に在る
翳った陰画が持ち去られた跡
鉛の球面に
再び景色が喚び込まれ
そこに他人との最初の食卓が設けられる